第8回フォーラム報告。ストックフォトビジネスの新たな取り組みについて考える

2016年7月21日に、JPAA(日本写真エージェンシー協会)の第8回フォーラムを開催。写真関連ビジネスの今後の広がりやJPAAの会員各社の取り組みなどについて、活発な意見交換が行われました。今回はそのフォーラムでの様子を、進行を務めた事業委員会委員長の諏訪博之さんに伺いました。

JPAA

今回のフォーラムのテーマは「新しい写真ビジネスの広がり」でした。このテーマを取り上げた理由と目的を教えてください。

ストックフォト事業を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。JPAAの会員企業も以前の3分の1近くにまで減り、また以前に当ブログでご紹介したCEPICの記事からもわかるように、その流れは世界規模でも避けられないことのようです。JPAAの会員である各社でも、同じような不安を抱いているのではないかと推察していました。

そこで、我々の仲間である他社はこの状況に対してどのように思っているか、何か対策を取っているのかといったことを、フォーラムの場で忌憚なく話せないかと考えました。せっかくなら、「生き残るために、次に何に目を向ければいいのか」と前向きに話ができたほうがいいですよね。

もともとはストックフォトを扱っている企業ですから、まったく新しい事業には進出しづらいものがあります。やはり写真・画像関連から何か目新しい分野や企画がないかと思い、

①動画のビジネス利用について
②新しく取り組んでいる写真関連ビジネスについて
③スマートフォン撮影写真のストックフォト販売ビジネスについて

という3つのテーマで、会員企業の方に話をしていただくことになった次第です。

諏訪博之さん

パネラーが、JPAAの会員のみというのは初めてのケースだったと思いますが、結果はいかがでしたか。

非常におもしろかったですね。今までのフォーラムでは、外部の識者の知識を習得するのが目的で、パネラーとして登壇されるのは外部の方が多かったですが、今回はすべて部内者。内容は、ストックフォト以外のビジネスモデルをどう探すか、どうやって新規事業で利益を出していくかという切実な話でしたので、会員のみで意見交換をするスタイルになったのはかえってよかったと思います。

ストックフォトを取り巻く環境変化の問題がどこまで現実味を帯びているのかが実感できますし、「弊社でも取り入れよう」「ウチではやめておこう」という判断材料にするためにも、さまざまなアイデアを出し合うことは必要。こうして会員企業同士で情報を開示する場を、毎回ではなくても何回かおきに設けてもいいのではないでしょうか。自社が行っている事業について、メリットやデメリットも含めてアピールすることができたという点でもいい機会でした。

会員企業各社の取り組みについて、どのような感想を持ちましたか。

写真館ビジネスには興味を抱きました。「カメラのキタムラ」でおなじみのキタムラが運営しているスタジオマリオという写真スタジオがあるのですが、年間売り上げは約380億円。ストックフォト業界全体の売り上げが100億円に満たないことを考えると、その差は歴然です。

撮影やライティングのスキルはストックフォトの会社であれば備えはあるので、スタジオを持っていなくてもカメラマンが出張して撮ればいい。機材やスキルという、既存の財産を生かすことができます。いい写真は作品としても使わせてもらうという前提にすれば、営業力のないカメラマンに代わって営業部分を会社が担ってあげるというビジネスも成り立つかもしれません。

また、これまで写真館といえば家族写真を撮る場で、その場合は子供のいる家庭がターゲットでした。しかしこれからの高齢化社会を鑑みたら、写真館で遺影を撮るというのもアリかもしれません。そういったビジネスチャンスを考えたときに、この分野にストックフォト業者が参入してもいいのでは、というヒントになればと思いました。

新しいストックフォトビジネスについて、ご自身の意見を教えてください。

以前から、弊社の名刺にはイラストを採用していますが、これを発展させてビジネスにできないかとは考えています。コミュニケーションアイコンキャラクター、略して「コムキャラ」と呼んでいる似顔絵です。

コミュニケーションアイコンキャラクター

社員証や名刺に写真を掲載している会社もありますが、女性だと嫌がる人がいることもあります。その際に、似顔絵なら写真よりも抵抗が少ないですし、顔を覚えてもらえるという効果も。また子供の持ち物に名前を書くことがありますが、それが写真だと犯罪を誘発するなど危険性も無視できません。でも似顔絵なら、ハードルが下がります。

ただ問題は、肖像をイラスト化するにあたり、パブリシティ権に抵触しないかということと、マネタイズすることに苦労しています。次の一手というのはなかなか見つからないし、見つかったとしても事業として実現するまでには時間がかかります。正直なところ、まだまだ模索中ですね。

今後、フォーラムで取り上げる予定のテーマを教えてください。

見過ごせないのは、AI(人口知能)による著作物の著作権。音楽業界にはすでにAI で作られたものが出回っていますが、今後はAIで撮影された写真の著作権はどのような扱いになるのか、ということが課題になると思います。また監視カメラで撮った映像の中で一部を切り取ったものはどういう扱いになるのか、スポーツシーンや天体など、カメラをあらかじめ据えておいて撮影したものは、など著作権のグレーゾーンについて取り上げたいです。

フォーラムは、以前は我々の仕事と権利を守るための情報交換の場でしたが、今は自分たちの足許を固めつつ次なるジャンルに打って出るにはどうしたらいいかということを考える場としての機能も持つようになりました。情報共有の場であるフォーラムを、もっと積極的に活用していきたいですね。


諏訪博之(すわひろゆき)
諏訪博之(すわひろゆき)

profile
マイザ株式会社代表取締役。2004年にSCREENホールディングスから社内ベンチャー制度により、マイザを設立。素材集CD-ROMの制作からストックフォト業界に参入。JPAA理事。事業委員長。さまざまな意見をブログで発信中。
http://mixaphoto.exblog.jp/

 


感動と喜びを与える「旅」の画像が、心豊かな社会を作る

主に旅関連の画像や情報の提供、Web関連のシステム開発などを手がけているJMC。画像を取り巻く最近の傾向について、また今後のビジネスの展開について、JMCのJTBフォト営業センターの高橋久泰さんと根本英樹さんにお話を伺いました。

STEVE VIDLER / JTB Photo

主な活動テーマについて教えてください。

弊社では、「感動と喜びを与える」をテーマに、ビジュアルコンテンツを提供しています。

2012年6月にJTBフォトとJMCが合併。それまでJTBフォトでは旅に関する写真や情報を取り扱っており、JMCではWebサイトの制作やシステムの開発・運営、情報コンテンツの発信などを行ってきました。合併によって画像とITという親和性の高さから事業領域が広がって協同できる部分も多くなり、コンテンツ力が増したという実感があります。

強みといえば、やはり「旅」関連の画像が多くそろっていること。もともとJTBの旅行パンフレットに掲載する画像のデータベースを管理していたJTBフォトが基軸ですから、旅館やホテル、食、風景といったが画像がそろっていました。さらに画像を集める段階で掲載許可をクリアにし、安心して使える画像データベースを構築し管理しています。Photo Works FREAK / JTB Photo

Photo Works FREAK / JTB Photo

写真に対する、社会の空気は変わったと思いますか。またそれはどのような点においてですか。

スマートフォンの画像アプリなどの普及のおかげで、写真に対する一般の人の知見がアップしたと感じています。これからはWebコンテンツがさらに重要視されるでしょうし、スマホで撮影した写真もかなり解像度が高いので、旅行パンフレットの表紙はともかく中に掲載する写真やWeb上では、今後はスマホで撮影された写真が掲載されるようになるのではないでしょうか。

そのようなときにどう差別化を図るかが、これからの大きな課題です。
弊社の場合はやはり「旅」を扱っている会社なので、旅行コンテンツに特化するという視点でアイデアを練り、新しい取り組みができないかと模索しています。これまでの旅のトレンドといえば、世界遺産と絶景。最近では、鉄道の旅に注目が集まり始めているので、そういった動きを敏感にキャッチして今後の展開に生かすことができればと思います。

また、画像だけでなく旅情報と合わせて提案することで、他社との差別化を図ることが必要なのではないかと考えています。

Masanori Yamanashi / JTB Photo

Masanori Yamanashi / JTB Photo

御社の今後の展開について教えてください。

ストックフォトを販売するという業態が難しい時代になってきていることは以前から感じているので、それに代わる写真関連の新規ビジネスを作っていかなくてはなりません。合併後に画像のデータ化が加速度的に進み、画像を提供しやすくなりました。また、情報コンテンツのデータベース化もでき、画像と情報をセットで販売できるようになったのもよかったと思います。それを基盤に、次の手を考える予定です。

HIDEKI NAWATE / JTB Photo

画像が持っているのは、感動と喜びを与える力。特に旅の写真は、風景でも食でも、行ったことのない場所、食べたことのない食事といった現場の魅力をたった1枚の写真で見せることで、写真の持つ力が発揮できます。1枚の写真がきっかけで、その場所に行ってみよう、あの料理を食べてみよう、あの人たちに会いに行こう、そうやって誰かの冒険心を後押しできるのではないでしょうか。感動と喜びを与えることが心豊かな社会の実現につながるのだという思いを抱きつつ、進んでいきたいです。


■株式会社JMC
1989年 設立。
JTB及びJTBグループの旅行情報を専門に取り扱う中核会社として発足。

2012年JTBフォトと合併。
主な事業内容として、Web、システム、ソフトウェアの開発・運営を行うIT事業、旅行関連情報や画像の収集・編集を行うコンテンツ事業、営業支援商品の販売やサービスを行うサポート事業がある。

<所在地>
東京都中野区本町2-46-1 中野坂上サンブライトツイン10F
TEL:03-5371-3152
http://www.jtb-jmc.co.jp/

■高橋久泰
profile
2001年、JMCに入社。オンライン旅行予約サイト開発のプロジェクトマネジャーを担当。2013年よりフォト部門に異動。現在は、JMCのJTBフォト営業センター・チームマネージャーを務める。

■根本英樹
profile
2001年、JTBフォトに入社。出版・広告会社への営業を担当。現在は、JMCのJTBフォト営業センター・スーパーバイザーを務める。