写真の70年、マグナム・フォトの70年

1947年にニューヨークの近代美術館で旗揚げされた、マグナム・フォト。ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモアが創設メンバーに名をつらね、会員が共同運営する写真家の集団として活動を続けてきました。

2017年に、創設70周年を迎えるマグナム・フォト。多種多様なバックグラウンドを持つ写真家集団の歴史とこれからの展望について、マグナム・フォト東京支社の小川潤子さんに聞きました。
※トップ画像/スペースシップ・ジャンクヤード、ロシア、2000年

ノルマンディー上陸作戦、1944年
ノルマンディー上陸作戦、1944年

マグナム・フォトができた経緯について教えてください。

第二次世界大戦が終わったのが1945年。創設メンバーは皆、戦時中に報道写真家として取材をしていて、そこで撮った写真を『LIFE』のようなグラフ誌に載せていました。当時はテレビもなく、人々が世の中で起こっていることを知る手段において、グラフ誌が占める割合は大きかったのではないでしょうか。その頃は、写真家が撮ったものはフィルムごと出版社に送ってしまって写真家の手から離れてしまうので、勝手にトリミングされたりキャプションを付けられたり、いわゆる好き勝手をされていたのです。なおかつ、撮った写真の著作権はすべて出版社に帰属していて自分のものではなくなっていました。だから、撮った写真の権利を守るために、また権利を主張していこう、と発足したのがマグナムでした。最初はニューヨークとパリに、その後にロンドンと東京に支社ができて、今の拠点は4つあります。

東京に支社ができたのは、1989年11月。マグナムとしてはもっとグローバルに展開したいという目的があり、またアジアの写真家をもう少し仲間に入れたいということもあり、アジアに拠点を置くことにしました。80年代後半のアジアの中心といえば、経済的な意味では日本でしたし、ストック写真のマーケットが充実していたのも日本。それに、カメラの多くは日本製。そこで東京に支社ができました。

これまでに100名近くの写真家が参画し、現在の正会員数は49名。日本人に久保田博二がいます。

2016年マグナム・フォト年次総会
2016年マグナム・フォト年次総会

なぜ、マグナムは70年も続いてきたと思いますか。

まずは、時代に合わせていろいろな形に変わりながら進んできたことが一つあると思います。元々は写真家の権利を守るために発足しましたが、ビジネスとしてはBtoBの組織です。ですが今は、BtoCの時代。一般の人向けに特別なサイトを立ち上げ(英文のみ)、撮影秘話や裏話といったいろいろな企画を、読み物のように興味深く読んでいただける構成になっています。

また、エデュケーション(教育)と我々が呼んでいるワークショップをハイエンドアマチュアの写真家向けに行ったり、一般の人が買いやすいようにオリジナルプリントの廉価版を作ったり。次世代のフォトグラファーを育てるべく、コンテストなども企画しています。

もう一つ、一番の原動力は写真家の思いの強さ、ではないでしょうか。マグナムがなければ、キャパやカルティエ=ブレッソンの作品が今の時代にまで残ってはいなかった可能性があります。写真家は孤独な職業ですが、グループになれば権利の主張もできるし大きい企画もできる。歴史的瞬間を切り取った写真をアーカイヴしてきちんと管理し、発信し続けていくことができるのは、やはりマグナムという集団の力ですし、それを写真家達が自分達も同じことをしたいという思いの元に集まってきているから、メンバーが変わっても思いは変わらないし、写真を後世に残そうとしています。そういう写真家の思いが、70年続いてきた原動力なのではないでしょうか。

ニューヨーク、2001年9月11日
ニューヨーク、2001年9月11日

報道写真を取り巻く時代性や、人々の意識の変化を感じていますか?

見る人や撮る人の意識の変化というよりは、発表の場の変化を強く感じています。発足当初はテレビがまだなく、伝えるメディアとしては写真しかありませんでした。ですからその時代の証言として写真を撮っていたのですが、そのうちテレビが普及して今はインターネット。写真家が写真を見せられる場は、インターネット上か写真集か写真展のどれかになりました。

ただマグナムで大切にしているのは、誰かが写真家に命じて撮影をさせることではなく、写真家が自分でテーマを見つけてそれを掘り下げて撮るというスタイル。そのため、インターネットは親和性が高く、発表しやすくなったという一面もあります。

報道写真は、時代と共に扱われ方が変わってきています。紛争地域で自分の撮った写真が額装されて美術館の壁に飾られるなんて、たとえキャパでも夢にも思わなかったのではないでしょうか。でもその美術館の壁に飾っても残ることができる写真を撮ることができるのがマグナムの写真家であって、その点については変わらないのではないかと思いますね。発表する場は変わってきましたが、根底にあるものは変わらないのです。

リビア、2011年
リビア、2011年

これからの70年について、どのようにお考えでしょうか。

よりビジネスライクになっていくと思います。今まではファミリーというか仲間のような人達が集まっていたという印象ですが、5年前からビジネスサイドを強化すべくポジションを新設して、ビジネス関連はそちらに集中させ、写真家は写真を撮ることに専念するという分業化を推し進めていくのが次のステップだと考えています。

70周年の記念イベントについては各拠点でいろいろな企画があって、一番の目玉は「マグナム マニュフェスト」という写真集の出版と写真展。70年の歴史を振り返る写真展は、ニューヨークのICP(国際写真センター)で開催されます。日本では、7月1日(土)〜9月18日(月)まで京都文化博物館で「パリ・マグナム写真展」が、10月6日(金)〜25日(水)まで東京ミッドタウン・FUJI FILM SQUAREで「マグナム・フォト展」が開催されます。

過去の写真には有名な作品も多いですが、そのせいか日本ではマグナムのイメージが「まだあったんだ」と過去のものとしての扱いなことも。そうではなくて、新しい活動もたくさん行っているのだということをお伝えしていきたいです。マグナムの歴史は写真の歴史でもあると感じますが、過去にこだわりすぎる70周年にはしないようにしていきたいですね。

ロバート・F・ケネディの葬儀列車、1968年
ロバート・F・ケネディの葬儀列車、1968年

小川潤子(おがわ・じゅんこ)
profile
1989年、マグナム・フォト東京支社の創設に参画。2003年よりディレクターに。


多岐にわたる素材と、その魅力を存分に生かすノウハウ

写真やイラストレーションに加え、動画、音など、2500万点以上に及ぶ、さまざまな素材を扱っているアマナイメージズ。ストック素材の内部制作や、新しい分野の素材の開拓など、さらにその領域を広げています。

母体であるアマナのストック事業から2007年に分社化して、10年になろうとするアマナイメージズ。同社が持つ強みと今後の展開について、アマナイメージズの松野正也さん(取締役/クリエイティブディレクター)にお話を伺いましたamanaimages 松野正也

アマナイメージズが扱っているストック素材には、どのようなものがありますか。

まずは、人物のライフスタイル表現のイメージ写真や、国内外を広く網羅する風景写真、専門性の高い自然科学、ファインアート。他にも海外セレブや報道写真など、広告や新聞・雑誌など、さまざまな場面で使われる静止画素材を主力商品として取り扱っています。

弊社は、母体であるアマナが広告制作・ビジュアルコンテンツ制作を行っている会社であり、クリエイティブ系のイメージ写真の品質には強いこだわりを持っているというのが特徴でもあります。たとえば、1枚でそのままキービジュアルになれるインパクトのある写真。利用者のメッセージやコンセプトを代弁できる表現がなされている写真。そういった表現力や高い品質であり続けられていることが、弊社の特徴の1つかなと思います。

他に今、力を入れているのが、サイネージやWeb広告に使われる動画素材。デバイスやインフラ環境が整ってきたおかげで、そういった需要が順調に増えてきています。以前から動画素材は扱っていますが、最近では4Kはもちろん、8K、16Kといった超高解像度動画の問い合わせにも対応するようになりました。

さらに、それらの動画編集には欠かせない楽曲や効果音の素材、ソーシャルゲーム向けキャラクター素材や、建築やエンタメ媒体向けの3Dモデリング素材、デザイナー必須のフォントやベクター素材まで、あらゆるクリエイティブの現場で活用していただける素材を幅広く取りそろえています。特に最近は無料でダウンロードできるベクター素材も多いですが、トンマナがそろわなかったり、実際にデザインのバッティングも多くなりがちかと思います。アマナイメージズでは日本のマーケットでよく使用されるテーマに向けた、オリジナリティの高いベクター素材を多く用意しています。

写真に限らず、日本のマーケットにフィットする弊社ならではの素材を、時代に合わせて常に用意していくことを怠らないようにしています。GOKU/a.collectionRF /amanaimages

もう1つの強みとして、日本人素材が豊富だと聞きました。また、内部制作もされているとか?

いちばん大切なのは、まずは日本の市場に受け入れられるものであること。主に国内の消費者が広告やメディアの受け手となるので、そこに響かないとダメだと思います。ですから、ターゲットとなる日本人に共感し、伝わるクオリティの写真を提供できるかにこだわっています。

「アマナイメージズといえば日本人素材に強い」という印象を保つには、良質な素材を提供し続けなければいけません。取り扱う写真作品全体のクオリティアップを目的に、内部制作も行っています。

撮影は丸一日かけて、5〜6シーンを一気に撮影します。制作スタッフは広告業界全般の分析を行い、その時期にどんな写真の需要があるかを鑑みて、半歩先を行くクリエイティブを行うようにしています。また今までのストックにはない撮り方にも挑戦することで、時代の潮流も表現。そうやって撮影されるものは、ストックフォト慣れしていない、若手の外部契約作家さんのクオリティのベンチマークにもなるわけです。

一日で静止画と動画を一度に撮影することもありますが、今後は動画の内部制作の割合ももっと増やしていきたいですね。apjt /amanaimages

一般ユーザーをターゲットにした施策などはあるのでしょうか。

弊社は、これまで広告表現に特化したプロのフォトグラファーによるプロ向けの写真を多く取り扱ってまいりました。それに加え、2016年には、セミプロからデザイナー、インスタグラマーをはじめとするさまざまなクリエイターの方々が作品を登録する「ForYourImages」というサイトも始めました。このサイトではブログ、企画書や年賀状、個人事業の告知など、あらゆる用途に気軽に利用でき、個人ユースの需要に十分対応できるラインナップとなっています。今後もいろいろなジャンルで活躍するクリエイターが登録して、商品の幅もさらに広がってくると思います。

そういった個人のユーザーに向けては、「写真を探すコツ」をきちんと伝えていくのが今後の課題ですね。サイトを開いて、トップに出てくる検索窓にまずキーワードを入れて探す方が多いと思いますが、それでヒットしないと「このサイトに自分のほしい写真はない」と判断されてしまいます。

写真を探すコツとしては、まず何をビジュアルで表現したいかを具体的に頭の中で絵を描き、その浮かんだ絵を構成するパーツをキーワードに置き換えて検索してみることがおすすめです。たとえば企画書や報告書などに使う、企業の「成長」を表す写真を探しているときには、「成長」だけでなく「積む」「上がる」といった「成長」から連想される言葉や類語も検索してみてください。グラフ上に矢印が上向いたグラフィックが出てくることもあれば、カラフルな本が積み重なっている写真が出てくることもある。どちらも「成長」を表していますが、矢印は勢いのある上向きさが感じられるし、本の重なりはその企業の歴史や歩みなどまで感じさせられる。こうしていろいろな表現の画像を探し出せるようになると、ストックフォトの使い道の広がりやおもしろさも出てくると思います。

最近では、お子さんがいる家庭でフォトブックを作ることが多いですが、その際に手持ちの写真とストックフォトを組み合わせる、というのもおすすめです。フォトブックの表紙や扉に花、風景などの季節や行事のイメージ写真を差し込むだけで、まるで本屋さんに並ぶ写真集のようにグレードアップできます。自分と家族のストーリーにタイトルを付けるように写真を選ぶ。ちょっとしたひと手間を加えることで、親戚や友人に見せたときの伝わり方が変わってきます。写真に触れる楽しさを知っていただけたらうれしいです。

© Sue Hsu/500px/amanaimages
たとえば、期の移り変わりをドラマティックに。なかなか自分では撮影できない表現をストックフォトで演出してみるのも。

アマナイメージズの最大の強みを教えてください。

単に一つの素材を売るだけでなく、その素材を使ってクリエイティブ全体を制作する中でのサポートが手厚くできるところだと思います。ライツクリアランスや、被写体の権利者からのクレームや損害賠償請求などのトラブルを解決する無料免責サービスも用意しています。

アマナグループのネットワークを活用すれば、撮り下ろしもできますし、企画から、デザイン、編集、運用、管理まですべて網羅できます。幅広いお客様のニーズをワンストップで解決、高品質で提供できる。それはやはり、広告業界で長く仕事をしてきたアマナとしてのバックグラウンドがあるからということに他なりません。扱う素材も多岐に渡り、アマナイメージズはストックフォトエージェンシーから今や総合ストック素材エージェンシーとなりました。複合的なサービスを含めて、いろいろなプラットフォームと連携したビジネスへの展開を、今後も積極的に行っていきたいですね。


松野正也(まつのまさや)

amanaimages 松野正也

profile
株式会社アマナイメージズ取締役。2007年グラフィックデザイナーとして株式会社アマナに入社、CI/VI開発・制作に携わる。2009年からamanaimages.comのWebデザイン・サイト運営を担当。現在は、主に広告制作マーケットに向けたストック商材のクリエイティブディレクションを担当している。
http://amanaimages.com/


第9回JPAAフォーラム報告。「実践著作権セミナー」をご紹介

2017年2月8日(水)に開催された、第9回JPAAフォーラム。今回は、「これなら分かる! 実践著作権セミナー ~許諾が要るか? それとも無断でできるか? 具体例で考える~」というテーマで、株式会社TBSテレビ総務局ビジネス法務部担当局次長の日向央さんに、講演をしていただきました。

これは、一般社団法人日本映像・音楽ライブラリー協会(JVLA)にご協力をいただき、JVLAが普段行っているセミナーを「実践著作権セミナー」としてJPAA会員に向けてカスタマイズされたものです。なぜこのセミナーを行ったのか、事業委員会担当理事の木下美和子さん(アフロ)にお話を伺いました。

「スマホの普及など機材の進化によって、誰でも簡単に動画が撮れる時代になりました。それはプロのフォトグラファーにとっても同様で、フォトエージェンシーでも動画素材の扱いが増えています。そこで気になるのは、動画素材の著作権について。写真と違う点はどこか、何に気をつけるべきかをフォーラムで会員全体に共有し、今後のビジネスに役立てられるような内容にできないかと考えました。

映像や動画の著作権についてのセミナーを行うにあたってJVLAのご協力を仰ぎ、TBSテレビで、日々、著作権についての諸問題に対応されている日向さんに、トラブル回避の方法をお話していただくことに。映像制作の現場での事例も交えながら、実践的な内容を解説していただきました」

JPAAの会員にとって、動画の著作権について聞く貴重な機会となったセミナーの一部を、抜粋してお伝えします。

映像制作における、著作権について

日向さん映像制作においては、著作権についてのあらゆる知識が体系的に必要とされます。講師を務めていただいた日向さんは、TBSテレビにおいてその著作権関連のマネジメントに携わる法務部に在籍されています。今回は、実例を用いながら、現場の苦労話や裏話などを話していただきました。

映像の制作者は、「権利者」か「利用者」か?

小説をドラマ化する場合、著作権法上では「権利者」と「利用者」が発生します。
「権利者」とは、著作権を持っている者。原作者である小説家・作家が権利者に当たります。権利者は、原作小説を利用したり複製したいと他者が申し出たときに、禁止または許諾をする権利があります。
「利用者」とは、コンテンツを使う側。この場合は、小説を出版した出版社を指します。権利者である作家が使用を禁止すればコンテンツを利用できませんし、許諾が得られれば対価を権利者に支払うことになります。
ただこのとき、ドラマが爆発的に人気になりそれに伴って小説が売れると、出版社は原作者よりも大きな利益を得ることになります。場合によっては、権利者よりも利用者のほうが大金を手にすることがあるということです。

では、ドラマを制作したテレビ局はどちらの立場になるのでしょうか? これは、著作権法上では「映画の著作物」という扱いになり、制作者であるテレビ局は「権利者」となります。権利者は、このドラマを複製したりネット配信するといった「利用」を行う者に対して、禁止権を行使できるのです。
その反面、テレビ局がたとえばこのドラマをDVD化しようとしたときには、音楽の複製や録音の利用、俳優らの実演を録画するなどについて「利用」を行う立場になるため、それぞれの権利者に許諾を得る必要が出てきます。この場合、テレビ局は「利用者」となるのです。

JASRACは、なぜカラオケ店から使用料を徴収できるのか

著作権というのは、17種類の利用方法の個別の禁止権の総称。ポイントとなるのは、「公衆」を対象にして利益を供与される状況で使ったかどうかということです。公衆とは不特定多数または少数、及び特定多数の人を指します。
たとえばある有名歌手が、大学の学園祭でノーギャラで歌ったとしたら。これは、不特定多数に聞かせてはいますが、利益が生まれていないので合法です。親しい友人を集めて、有料で歌ったとしたら。こちらも、利益は生まれましたが特定少数が対象なので、問題ありません。

では、カラオケはどうか。カラオケボックスの中で特定少数である友人に聞かせているだけだから、大丈夫なのではと思いがちです。しかしながら、カラオケボックスの場合は、経営している店が不特定少数の客に対して歌ったことで利益を得ているとの裁判所の判断が出され、JASRACがカラオケ店から使用料を徴収しています。

今、音楽教室からも使用料を徴収することで話題になっていますが、これも先生が生徒に聞かせる、つまり不特定(多数のみならず少数でもよい)の相手に対して音楽を使うことで利益を生んでいるとみなされたためと考えられるでしょう。

建築物における、「権利者」と「利用者」の誤解

通常、「利用者」は、あるコンテンツを使う際に「権利者」が誰であるかを確認し、許諾を得てから利用します。これが権利処理、いわゆるライツクリアランスなのですが、時として権利者が「権利」の範疇を間違ってとらえていたり、権利がないのに権利を主張する例などもあります。
たとえば、著作権と所有権を混同している場合。神社仏閣などの外観を撮影して放送することがありますが、その際に該当する神社仏閣の許諾が必要でしょうか? 本来は不要です。神社仏閣の私有地に入り込んで撮影していない限り、許諾はいらないのです。入り込んで撮影した場合でも、撮影された映像に関し、所有者が権利侵害の主張をできるわけではありません。

同様に、その他の建築物についても外観を撮影して無断で放送できるのでしょうか? 答えは、可能です。著作権法には「建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」とあり、それを受けた項目に「建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」と定められています。
対象となる建築物と同じ建物を作るという複製はNG。それを売るのもNG。権利は建築の設計者にあり、そもそも所有者には禁止権がありません。その建築物のおもちゃを作って販売し、あるいは外観を撮影して絵はがきにして販売したとしても、著作権の侵害にはならないのです。

商標を放送すると、商標権の侵害になるのか?

放送中、さまざまなメーカーの製品が画面に映り込むことがありますが、製品には商標がついており、それらを放送することは商標権の侵害になるのではないか、という認識がテレビ局の現場にはあります。しかし、商標権とは放送や複製の禁止権ではなく、別の製品にその商標をつけて販売をすると、それが商標権の侵害に当たるというものです。よって、ただ放送するだけであれば商標権の侵害には当たりません。

以前に、一般の人から東京・大阪の放送局に対して「『まいど』を商標登録したので、『まいど』を放送するに当たってはご留意ください」との手紙が届けられたことがあります。この人の場合、「まいど」の登録区分が「放送」であり、これは放送サービスを「まいど」という名前で行うよという意味であり、「まいど」という言葉を使ってはいけないということではありませんでした。

このように、「権利者」と「利用者」の双方に誤解を生んでいるケースはまだ他にもあります。著作権が示す範囲を確認し理解することで、著作権を正しく活用していくことが大切だと考えています。

写真オタクが集まった、写真好きのための会社

広告に使われるクリエイティブ素材だけでなく、スポーツや報道の写真や動画、その撮り下ろしなどを手がけるアフロ。1998年からは日本オリンピック委員会のオフィシャルフォトエージェンシーに認定され、オリンピックの公式写真集の制作も行うなど業務の幅を広げています。今後の展望について、代表取締役社長の青木紘二さんにお話を伺いました。

オリンピックの公式写真集を出されるようになったのは、いつからですか?

1998年の長野オリンピック・パラリンピックからですね。それから20年、2016年のリオデジャネイロで10冊めになります。
選手の顔写真は出発前に撮影。大会期間中は私も含めて弊社から7名のカメラマンが現地に行き、閉会式に出る間もなく帰国して写真のセレクト作業に没頭しました。選手が首相官邸に挨拶に行く前に集合写真を撮るのですが、皆さんは自由というかなかなか集合してくれず、ウチのスタッフ総出で選手をまとめたりする場面もありました。
写真集の発行作業に当たっては、企画、編集、写真手配、レイアウト、印刷まで、すべて弊社で行いました。

オリンピックの現場では、撮影に一番いい場所はテレビカメラの独占状態。フォトポジションは、年々追いやられている印象です。とはいえ、写真には写真の魅力がある。一瞬を切り取った写真には、見る人の想像力をかき立てる力があります。体操の内村航平選手が初めてメダルを取った北京オリンピックの写真を出したときには、内村選手のご両親からお礼の連絡があったほどです。
リオデジャネイロオリンピック日本代表選手団2016

アフロがスタートしたのは、いつのことでしょうか。

最初は、自分の写真事務所としてのスタートでした。1980年のことです。私はそのころスイスに住んでいて、スイスのスキー教師国家資格を取得してからカメラマンになり、世界中を旅していました。旅先で撮った写真がすでにストックとしてあり、声をかけた同業者がスポーツ、特にスキーの写真をたくさん預けてくれました。
最初に広告を打ったときのキャッチコピーが「スキーなら、なんでも」というものでした。当時、山と渓谷社の『skier』という雑誌で年間300ページの制作を担当していたこともあり、スキーの写真があちこちで使われるようになったのです。

1992年にバブルが弾けたとき、弊社だけはなぜか売り上げが伸びました。「アフロだけなぜ?」と取材やインタビューを多数受けたのですが、私の答えは「わかりません」。本当にわからないんですよ。今考えると、最初はスキー、次にゴルフ、風景、そしてクリエイティブの写真、と少しずつ取り扱いを増やしていったら、お客さんも少しずつ増えていったんです。最初から間口を広げすぎず、できるところからジャンルを特化して成長していったのが、大きく失敗しなかった理由なのではと思っています。

報道写真は儲からないという定説があって、最初はクリエイティブだけを扱っていました。ただ以前から、ニュースはやりたかったんです。スポーツは得意なのでスポーツのニュースから取り扱いを始め、芸能をやってから時事写真へ。そうしているときに、長野オリンピックの公式写真集を出すエージェンシーに選ばれました。それまでのスキー写真の取り扱いなどから、ウィンタースポーツの写真はアフロだという認識をしてもらえたこと、またただの報道写真ではなく作品という形で撮った写真を写真集にしたいとオリンピック委員会の方たちに推してもらえたのは、本当にうれしかったですね。
©Iwao Kataoka/AFLO

写真エージェンシーにとっては厳しい時代になってきているようですが、そのことについてどう思われますか。

写真というものがこの世からなくなることはないと思うのですが、機材がよくなったおかげで誰もがある一定のクオリティの写真を撮れるようになりました。これは、プロのカメラマンや写真エージェンシーにとってはビジネスが成り立ちにくく、将来は厳しいと感じます。

動画では、8Kの存在が脅威。あの奥行き感は特別です。この出現は、世の中を変えていくでしょうね。今までとは違って8Kなら静止画を切り出すこともできてしまう。こういった難しい状況であることを真摯に受け止めてやっていくしかない、そこにビジネスチャンスが見出せるのではないでしょうか。

弊社では『死ぬまでに行きたい世界の絶景』や『108の世界遺産』といった本のアイデア出しなども行っています。このようなことができたのは、やはりオリンピックの公式写真集の制作を自社で行ったおかげで、本に関する知見が蓄積できたから。写真をどう使ってもらえばいいかという提案から働きかけることも、今後のエージェンシーの活動を広げるヒントになるのではないでしょうか。

近年は、動画のマーケットも広がってきています。この動画は、江戸末期から受け継がれてきたガラス工芸、江戸切子の職人技を紹介したもので、自社で企画から撮影・編集までを手がけました。

今後の展望についてお聞かせください。

弊社のサイトは更新頻度が高く、オリンピックやワールドカップのときは24時間態勢で情報を発信してきました。それに、利用されるお客様から「切り口がおもしろい」という評価をいただきます。写真好きなオタクばかりが集まっているので、写真に対する愛情や「楽しい」という気持ちがサイトにも出てしまうのでしょう。「写真をどう使うか、どう伝えるか」という写真への想いが大切です。
これまでにもいくつか転機はあったのですが、それをなんとか乗り越えられたのは「好きなことをやろうよ」という姿勢を通してきたから。その「好き」な気持ちが集客性につながればいいのですが、これがなかなか。業界で一番、ビジネスライクにやっていない会社なので、生き延びられるかは心配ですけど、そこがウチのいいところでもあると思っています。


青木紘二(あおきこうじ)青木紘二(あおきこうじ)

Profile
株式会社アフロ代表取締役社長。20代でスイスに留学、スイス連邦公認国家スキー教師の資格を取得。スイスをベースに、カメラマンの仕事を開始。1980年に株式会社アフロを設立。1990年に帰国。1998年に長野オリンピック・パラリンピックの公式写真集を発行。以降の夏期・冬期のオリンピック・パラリンピックの公式写真集を手がける。
http://www.aflo.com/


映像素材のライブラリー企業で、今起こっていることとは?

日本映像・音楽ライブラリー協会は、業務用の映像素材と音楽素材を提供しているライブラリー企業の集合団体です。今回は、協会の会長を務める横山一隆さんにインタビュー。映像ライブラリーを扱う企業の現況や今後の課題などについて伺いました。

横山一隆

日本映像・音楽ライブラリー協会とは、どんな団体なのでしょうか?

協会の発足は1993年。写真の協会はすでにできていましたが、映像や動画を扱う企業の協会はまだありませんでした。そこで、映像という素材に価値を持たせて世の中にもっと知ってもらおうという目的で、横のつながりを作りました。

協会では、映像や音楽素材の利用方法のガイドを作ったり、著作権をクリアにして使用するにはどうしたらいいかという啓蒙活動を行っています。現在は18社プラス特別協賛企業が2社、加盟しています。映像と音楽は切っても切れない関係性がありますから、音楽素材を扱っている企業も自然に加わりました。

協会に加盟している企業にはそれぞれ個性があり、たとえば歴史素材だけを扱っているところや、ヘリやドローンによる空撮が多い企業、海外の会社のライブラリー素材を扱っていたり、劇映画などハイエンドのユーザーさんに提供する素材を扱うなど、さまざまです。

日本映像・音楽ライブラリー協会
日本映像・音楽ライブラリー協会 http://www.jvla.gr.jp/

映像素材では、どのようなトラブルが起こりがちですか。

写真でも同様のトラブルがありますが、勝手に映像をダウンロードしてしまう人が後を絶ちません。ダウンロードした映像を、誰でも簡単に見られるサイトに再アップされたりして、これは大変困りますね。

あとよくあるのが、Vコンへの無断使用です。Vコンとは、CMなどの動画撮影を行う前に作るコンテなのですが、絵ではなくサンプル動画を編集して実際のイメージに近いものを作るものです。ライブラリー素材には不正使用を防ぐためにサンプル映像であることがわかるマークが入っているのですが、そのマークが入ったままVコンを作ってクライアントの前で試写を行い、実際の制作に入るとその動画は使わない、となってしまう。サンプル使用であっても試写用Vコンに使ったわけですから、無料で使われるのはおかしいのです。明確な規定がなく、また「実制作ではないので協力してほしい」と言われることもあり、この件については各社で足並みをそろえて対処しなくてはいけないと考えています。

よくセミナーを開催されているそうですが、どのような内容なのでしょうか。

著作権に対して世間が敏感になっているのは写真も動画も同じようで、著作権に関する内容が多くなりました。人物の写り込みや特定の建物などはどこまで撮影していいのか、という質問をよく受けます。

著作権以外の問題で写真と決定的に違うのは、映像の場合は規格が大きく変わるとその影響を大きく受ける、ということです。規格というのは、撮影機材の規格のことで、ハイビジョンから4Kに、そして今や8Kの時代が来ています。高画質化がどんどん進むと、以前の規格で撮った映像は画質が荒く見え、視聴者には抵抗があります。フィルムの場合は元々が高画質のため、たとえ古いものでもデータを取り込んでしまえば修正して、今と遜色のない状態で見ることができるのですが、映像はそうはいきません。風景など汎用性のある映像をライブラリーで残したとしても、機材が進化するとその映像が意味をなさなくなってしまいます。そのような事態に、映像に携わる我々はどのように対処すべきか、以前に撮った映像の価値をどう引き出すかが大きな課題です。

またこのところ注目度が上がっているのは、ドローンによる空撮です。撮影は、どこで撮るか、どういうレンズで撮るか、どの角度で撮るか、この3つが基本的かつ大切なポイント。カメラマンによっては、「自分だけが知っている、ベストショットが撮れる場所」があって、たとえば秋に落葉すると向こうの山の峰がキレイに撮れるとか、登山道からは見えないけどここからは眼下が一望できるとか、秘蔵場所があったものです。それがドローンの登場によって、いつでもどこでもどこからでも撮れるようになってしまった。基本の3つを一気に解決する画期的なことでした。

ドローンは事故も多く、2015年から通称ドローン規制法(改正航空法)が施行され、禁止ルールが明確になりました。規制地域内であればたとえ自宅の庭であっても、200g以上のドローンを操作するのは禁止されています。当然、他の場所であっても撮影の際には国土交通省に許可を出さなくてはならないので、今後はこういった話もセミナーで共有できたらと思います。

今後の展開については、どのようにお考えですか。

日本映像・音楽ライブラリー協会ができたときは加盟会社が25社だったそうです。それからは減ってしまいましたが、まずは加盟会社を増やすよりも、協会の活動が活性化させて業務量が増やし、必然的に加盟会社が増えるようにしていきたいですね。そのために、サイトの刷新を行い、見やすく使いやすい場にしました。ヘルプデスク機能を設けたので、「こんな映像がほしい」と連絡を入れていただければ、いちいち各社に聞かなくても加盟各社に一度に確認が取れるようになっています。

昨今ではデジタルサイネージがとても増えたので、そこをターゲットにリーズナブルに映像を使ってもらえるライブラリーを考えることにもチャレンジしています。
映像とネットは親和性がいいので、デジタル化の波に乗って、うまく拡大していければいいなと思います。そのためにも、時代に合わせた展開方法を今後も考えて実行していきたいです。


横山一隆(よこやまかずたか)

profile
トーフナ映像株式会社代表取締役。1981年トーフナ映像株式会社設立。カメラマンとして業務に携わる。1985年から空撮業務を開始。昭和天皇崩御の際には、大喪の礼の空撮に参加。1998年の長野オリンピックはプレから参加し、本大会時は白馬周辺の滑降、ジャンプを空撮担当。その他、映画やCMで多くの作品に参加。2012年からドローンによる空撮を開始、カメラマンとして撮影継続中。


今、注目の著作権セミナー。知っておくべき画像の権利とは?

東京オリンピックのエンブレム問題で、にわかに注目を集めた著作権。画像を利用する際に著作権のことをどこまで知っておけばいいのか、気をつけるポイントはどこなのでしょうか。定期的に著作権セミナーを開催しているアマナイメージズの佐々木孝行さんに、セミナーを行う理由と意義について聞きました。

著作権セミナーを行うことになったきっかけは?

もともとは社員研修が最初でした。アマナグループはビジュアルコンテンツを制作する会社であり、社員一人一人が著作権に関する意識を高く持つ必要があります。教える側のメンバーとして自分も参加しており、その後、取引先の広告代理店や制作プロダクションなどに「ぜひウチでもやってほしい」と声がかかるようになりました。

そうしているうちに、JAAA(日本広告業協会)のシンポジウムに呼んでいただいたのが、その後継続的にセミナーを行う大きなきっかけになりました。電通をはじめとする大手広告代理店や制作プロダクションの法務担当の方が数多く出席する会で、撮影現場での権利処理に関してストックフォト提供者の観点から話をしたところ、口コミで広まったようです。

セミナーニーズの背景には、どのようなことが考えられますか。

写真のデジタル化が進み、画像の取り扱いが簡単になったことが大きいですね。デジタルの場合はデータのやりとりが簡単な分、いつの間にか画像が勝手に使われているなど、データが独り歩きしがちです。結果、無意識の著作権侵害による事故が増えていくので、未然に防ぐための啓蒙が必要だと考えましたし、画像を利用する側も同様に思ったのではないでしょうか。

東京オリンピックのエンブレム問題直後は、多い時で月に15回を越えるなど、悲鳴を上げたくなるようなご依頼をいただきましたが、今でも月に2、3回ほど開催しています。対象は、制作の現場で実際に画像を利用するデザイナーなどのクリエイターが約7割。残り3割は営業部門であったり、マーケティング部門、広報などさまざまです。広告制作の会社だけではなく、食品や電化製品のメーカー、不動産会社などもあり、世の中の流れとして著作権のことをきちんと勉強させたいという企業が増えてきたように感じます。

ベネッセグループ研修会場でのセミナーの様子。
ベネッセグループ研修会場でのセミナーの様子。

セミナーでは、どのような講義を行うのでしょうか。

著作権の基礎的な話から始まって、世の中の権利に関する動き、たとえば今ならTPP加盟で予想される変化や、ジャパンコンテンツ輸出に向けた国の動き。そして過去の判例と合わせて、これまでに実際に経験したトラブルの事例などを中心に、90分ほど話します。

クレームでいちばん多いのは建物ですね。神社、寺、有名なビルなど、権利者からクレームがくることがあります。もともと恒常的に設置されている建物やビルなどは、自由に撮影して広告に使用しても法的には問題がないことが多いです。私有地の中とか撮影禁止の場所で撮っていなければ、むしろ撮影者側の著作権が優先されます。したがって、クレームには何ら法的な論拠がありません。

しかしながら、広告の場合は、そのクレームが制作側ではなく直接クライアントのところに行ってしまいますから大騒ぎになる。法的に問題がなくても、クレームをつけられたということ事態、企業としては敬遠します。セミナーでは、法的な観点で注意しなくてはならないことは何か、それとは別にクレームを未然に防ぐためにはどうしたらいいか。この2つの観点で話をしています。

セミナーでよく話される内容は、他にどんなことがありますか。

クリエイティブ系の人の関心は、「パクリはどこまで許されるか」。これは過去の判例を示して解説します。日本の著作権裁判は歴史が浅く、なかなか判決まで持ち込まれるものが少ないです。途中で和解してしまうと裁判がどんな内容だったのか、なぜ著作権侵害に触れることになったのかといった話が表に出ないので、判決が出た事例は大いに参考になります。

類似したキャラクターを使ったとされた、博士イラスト事件。
類似したキャラクターを使ったとされた、博士イラスト事件。

 

写真のパクリ裁判としては国内最初の事案とされている、みずみずしいスイカ写真事件。
写真のパクリ裁判としては国内最初の事案とされている、みずみずしいスイカ写真事件。

 

それと、よくトラブルになるテーマとしては、センシティブ使用があります。たとえば、「私も愛用しています」と、精力剤や育毛剤の愛用者の声を代弁しているようなモデル写真の使い方。実際にはそうではないにも関わらず、です。他には、20代のモデルなのに、「私はこれでも40代です」と化粧品やエステの広告に利用されたりします。利用規約では禁止行為になっているのですが、ストック画像なら何に使ってもいいと勘違いしている人がいますが、これは要注意です。

また最近では投稿型の写真販売サイトが増えてきましたが、投稿する側の撮影マナーや、情報精度に対する姿勢がかなり危険だなと思うことがあります。そういう意味では、利用する側で、写真と説明文が本当に合っているのか、慎重に確認することが必要でしょう。今後、このような形のサイトが増えるでしょうから、投稿する側、利用する側、両者への啓蒙が必要だと感じています。

よく質問されることは何でしょうか。

最近多いのは、プレゼン資料の中でどこまでネットの画像を使っていいのか、です。杓子定規に言ってしまえばすべてNGですが、「引用」として使う方法をアドバイスしています。たとえば、説明を補足するための具体的な資料写真として使う場合。これは条件を満たすことで引用できる可能性があります。

ウォーターマーク入りの画像も安易に使われることが多々あります。本来、プレゼン使用として許されるのは、その写真を広告などの素材として使用するかどうかを検討する場合のみですから、全く関係のないプレゼン資料にイメージカットとして使用することは、完全なる著作権侵害ですね。

それと、「ロイヤリティフリー」を誤解している人も多く見受けられます。「フリー」を拡大解釈して、自分が買った画像はどんな形でも使えると思い込んでいる人がいます。また、すべての権利処理がされている画像だと思っている人も。実際には使用にも禁止行為があり、権利処理もすべてクリアしているというわけではありません。「フリー」という言葉を、都合のいいように解釈しないよう気をつけましょう。

あと質問で多いのが、写り込んだ看板の処理に関する質問です。風景の一部として撮った写真に写り込んだ看板であれば、その写真を広告に使用したとしても何ら問題とはなりませんから、あまり神経質にならないようにアドバイスしています。

また、写真の輪郭線をトレースしてイラストを描き起こす行為。これもれっきとしたパクリ行為になります。

著作権について、今後はどんなトラブルが起こると予想されますか。

これまでになかった新しいメディアが登場し、デジタルとアナログの垣根すら曖昧な時代になってきました。トラブルがなぜ起きてしまうのかという理由の一つに、ルールそのものが時代に追いついていないということも言えると思います。著作権の保護を目的にするのではなく、より社会に役に立つライセンスの考え方や管理方法を、我々のような業界がリーダーシップを持って提案していく必要があると思います。


佐々木孝行(ささきたかゆき)

profile
株式会社アマナイメージズ取締役。長年にわたり、クリエイティブ素材の流通ビジネスにおける商品開発を、責任者として担当。世界中の著名写真家やクリエイターとの契約締結を数多く手がける一方、制作の現場で発生したさまざまなトラブルの解決を指揮。安全な写真の利用啓蒙を目的に、一般企業での著作権セミナーの講演や業界シンポジウムのパネラーを数多く務める。


第8回フォーラム報告。ストックフォトビジネスの新たな取り組みについて考える

2016年7月21日に、JPAA(日本写真エージェンシー協会)の第8回フォーラムを開催。写真関連ビジネスの今後の広がりやJPAAの会員各社の取り組みなどについて、活発な意見交換が行われました。今回はそのフォーラムでの様子を、進行を務めた事業委員会委員長の諏訪博之さんに伺いました。

JPAA

今回のフォーラムのテーマは「新しい写真ビジネスの広がり」でした。このテーマを取り上げた理由と目的を教えてください。

ストックフォト事業を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。JPAAの会員企業も以前の3分の1近くにまで減り、また以前に当ブログでご紹介したCEPICの記事からもわかるように、その流れは世界規模でも避けられないことのようです。JPAAの会員である各社でも、同じような不安を抱いているのではないかと推察していました。

そこで、我々の仲間である他社はこの状況に対してどのように思っているか、何か対策を取っているのかといったことを、フォーラムの場で忌憚なく話せないかと考えました。せっかくなら、「生き残るために、次に何に目を向ければいいのか」と前向きに話ができたほうがいいですよね。

もともとはストックフォトを扱っている企業ですから、まったく新しい事業には進出しづらいものがあります。やはり写真・画像関連から何か目新しい分野や企画がないかと思い、

①動画のビジネス利用について
②新しく取り組んでいる写真関連ビジネスについて
③スマートフォン撮影写真のストックフォト販売ビジネスについて

という3つのテーマで、会員企業の方に話をしていただくことになった次第です。

諏訪博之さん

パネラーが、JPAAの会員のみというのは初めてのケースだったと思いますが、結果はいかがでしたか。

非常におもしろかったですね。今までのフォーラムでは、外部の識者の知識を習得するのが目的で、パネラーとして登壇されるのは外部の方が多かったですが、今回はすべて部内者。内容は、ストックフォト以外のビジネスモデルをどう探すか、どうやって新規事業で利益を出していくかという切実な話でしたので、会員のみで意見交換をするスタイルになったのはかえってよかったと思います。

ストックフォトを取り巻く環境変化の問題がどこまで現実味を帯びているのかが実感できますし、「弊社でも取り入れよう」「ウチではやめておこう」という判断材料にするためにも、さまざまなアイデアを出し合うことは必要。こうして会員企業同士で情報を開示する場を、毎回ではなくても何回かおきに設けてもいいのではないでしょうか。自社が行っている事業について、メリットやデメリットも含めてアピールすることができたという点でもいい機会でした。

会員企業各社の取り組みについて、どのような感想を持ちましたか。

写真館ビジネスには興味を抱きました。「カメラのキタムラ」でおなじみのキタムラが運営しているスタジオマリオという写真スタジオがあるのですが、年間売り上げは約380億円。ストックフォト業界全体の売り上げが100億円に満たないことを考えると、その差は歴然です。

撮影やライティングのスキルはストックフォトの会社であれば備えはあるので、スタジオを持っていなくてもカメラマンが出張して撮ればいい。機材やスキルという、既存の財産を生かすことができます。いい写真は作品としても使わせてもらうという前提にすれば、営業力のないカメラマンに代わって営業部分を会社が担ってあげるというビジネスも成り立つかもしれません。

また、これまで写真館といえば家族写真を撮る場で、その場合は子供のいる家庭がターゲットでした。しかしこれからの高齢化社会を鑑みたら、写真館で遺影を撮るというのもアリかもしれません。そういったビジネスチャンスを考えたときに、この分野にストックフォト業者が参入してもいいのでは、というヒントになればと思いました。

新しいストックフォトビジネスについて、ご自身の意見を教えてください。

以前から、弊社の名刺にはイラストを採用していますが、これを発展させてビジネスにできないかとは考えています。コミュニケーションアイコンキャラクター、略して「コムキャラ」と呼んでいる似顔絵です。

コミュニケーションアイコンキャラクター

社員証や名刺に写真を掲載している会社もありますが、女性だと嫌がる人がいることもあります。その際に、似顔絵なら写真よりも抵抗が少ないですし、顔を覚えてもらえるという効果も。また子供の持ち物に名前を書くことがありますが、それが写真だと犯罪を誘発するなど危険性も無視できません。でも似顔絵なら、ハードルが下がります。

ただ問題は、肖像をイラスト化するにあたり、パブリシティ権に抵触しないかということと、マネタイズすることに苦労しています。次の一手というのはなかなか見つからないし、見つかったとしても事業として実現するまでには時間がかかります。正直なところ、まだまだ模索中ですね。

今後、フォーラムで取り上げる予定のテーマを教えてください。

見過ごせないのは、AI(人口知能)による著作物の著作権。音楽業界にはすでにAI で作られたものが出回っていますが、今後はAIで撮影された写真の著作権はどのような扱いになるのか、ということが課題になると思います。また監視カメラで撮った映像の中で一部を切り取ったものはどういう扱いになるのか、スポーツシーンや天体など、カメラをあらかじめ据えておいて撮影したものは、など著作権のグレーゾーンについて取り上げたいです。

フォーラムは、以前は我々の仕事と権利を守るための情報交換の場でしたが、今は自分たちの足許を固めつつ次なるジャンルに打って出るにはどうしたらいいかということを考える場としての機能も持つようになりました。情報共有の場であるフォーラムを、もっと積極的に活用していきたいですね。


諏訪博之(すわひろゆき)
諏訪博之(すわひろゆき)

profile
マイザ株式会社代表取締役。2004年にSCREENホールディングスから社内ベンチャー制度により、マイザを設立。素材集CD-ROMの制作からストックフォト業界に参入。JPAA理事。事業委員長。さまざまな意見をブログで発信中。
http://mixaphoto.exblog.jp/

 


感動と喜びを与える「旅」の画像が、心豊かな社会を作る

主に旅関連の画像や情報の提供、Web関連のシステム開発などを手がけているJMC。画像を取り巻く最近の傾向について、また今後のビジネスの展開について、JMCのJTBフォト営業センターの高橋久泰さんと根本英樹さんにお話を伺いました。

STEVE VIDLER / JTB Photo

主な活動テーマについて教えてください。

弊社では、「感動と喜びを与える」をテーマに、ビジュアルコンテンツを提供しています。

2012年6月にJTBフォトとJMCが合併。それまでJTBフォトでは旅に関する写真や情報を取り扱っており、JMCではWebサイトの制作やシステムの開発・運営、情報コンテンツの発信などを行ってきました。合併によって画像とITという親和性の高さから事業領域が広がって協同できる部分も多くなり、コンテンツ力が増したという実感があります。

強みといえば、やはり「旅」関連の画像が多くそろっていること。もともとJTBの旅行パンフレットに掲載する画像のデータベースを管理していたJTBフォトが基軸ですから、旅館やホテル、食、風景といったが画像がそろっていました。さらに画像を集める段階で掲載許可をクリアにし、安心して使える画像データベースを構築し管理しています。Photo Works FREAK / JTB Photo

Photo Works FREAK / JTB Photo

写真に対する、社会の空気は変わったと思いますか。またそれはどのような点においてですか。

スマートフォンの画像アプリなどの普及のおかげで、写真に対する一般の人の知見がアップしたと感じています。これからはWebコンテンツがさらに重要視されるでしょうし、スマホで撮影した写真もかなり解像度が高いので、旅行パンフレットの表紙はともかく中に掲載する写真やWeb上では、今後はスマホで撮影された写真が掲載されるようになるのではないでしょうか。

そのようなときにどう差別化を図るかが、これからの大きな課題です。
弊社の場合はやはり「旅」を扱っている会社なので、旅行コンテンツに特化するという視点でアイデアを練り、新しい取り組みができないかと模索しています。これまでの旅のトレンドといえば、世界遺産と絶景。最近では、鉄道の旅に注目が集まり始めているので、そういった動きを敏感にキャッチして今後の展開に生かすことができればと思います。

また、画像だけでなく旅情報と合わせて提案することで、他社との差別化を図ることが必要なのではないかと考えています。

Masanori Yamanashi / JTB Photo

Masanori Yamanashi / JTB Photo

御社の今後の展開について教えてください。

ストックフォトを販売するという業態が難しい時代になってきていることは以前から感じているので、それに代わる写真関連の新規ビジネスを作っていかなくてはなりません。合併後に画像のデータ化が加速度的に進み、画像を提供しやすくなりました。また、情報コンテンツのデータベース化もでき、画像と情報をセットで販売できるようになったのもよかったと思います。それを基盤に、次の手を考える予定です。

HIDEKI NAWATE / JTB Photo

画像が持っているのは、感動と喜びを与える力。特に旅の写真は、風景でも食でも、行ったことのない場所、食べたことのない食事といった現場の魅力をたった1枚の写真で見せることで、写真の持つ力が発揮できます。1枚の写真がきっかけで、その場所に行ってみよう、あの料理を食べてみよう、あの人たちに会いに行こう、そうやって誰かの冒険心を後押しできるのではないでしょうか。感動と喜びを与えることが心豊かな社会の実現につながるのだという思いを抱きつつ、進んでいきたいです。


■株式会社JMC
1989年 設立。
JTB及びJTBグループの旅行情報を専門に取り扱う中核会社として発足。

2012年JTBフォトと合併。
主な事業内容として、Web、システム、ソフトウェアの開発・運営を行うIT事業、旅行関連情報や画像の収集・編集を行うコンテンツ事業、営業支援商品の販売やサービスを行うサポート事業がある。

<所在地>
東京都中野区本町2-46-1 中野坂上サンブライトツイン10F
TEL:03-5371-3152
http://www.jtb-jmc.co.jp/

■高橋久泰
profile
2001年、JMCに入社。オンライン旅行予約サイト開発のプロジェクトマネジャーを担当。2013年よりフォト部門に異動。現在は、JMCのJTBフォト営業センター・チームマネージャーを務める。

■根本英樹
profile
2001年、JTBフォトに入社。出版・広告会社への営業を担当。現在は、JMCのJTBフォト営業センター・スーパーバイザーを務める。


CEPICの総会で感じた、写真業界の世界的な潮流

CEPICとは、ヨーロッパを中心とする20カ国・約800のフォトエージェンシーが加盟する業界団体です。メンバーには規模の大小を問わずさまざまなフォトエージェンシーを始め、著名な美術館やギャラリー、通信社が含まれています。
WIPO(世界知的所有権機関)のメンバーとして著作権の保護に取り組むだけでなく、写真家とフォトエージェンシーの健全な関係を促し、業界全体の成長を促すための活動を行っています。

CEPICの総会は年に1回、開催されており、2016年は5月末にクロアチアの首都ザグレブにて開かれました。その総会に参加した、時事通信フォトの本山洋文さんにインタビュー。普段、海外の提携会社との連絡や調整、海外からの注文に応えて写真を配信するといった業務を行っている本山さんに、総会の様子や写真業界の世界的な潮流について感じたことを伺いました。

CEPICのHP
CEPICのHP。 http://cepic.org/
総会の様子は動画でご覧になれます。 http://cepic.org/congress

2016年の総会への参加者、参加国数はどの程度だったのでしょうか。

今年は34カ国から213社が参加、総会への参加登録者数は356人でした。これは例年より少ない人数です。

日本からの参加は、弊社とピクスタの2社のみ。私は2012年、2014年、2015年、そして2016年に参加していますが、今年は最も日本のエージェンシーの参加が少ない年でした。

日本だけでなく地元のヨーロッパのエージェンシーの参加も減っており、CEPIC事務局長のシルビ・フォドル(Sylvie Fodor)さんにお話を伺ったところ、参加者の減少は重大な問題だと認識されていました。

減少の理由については、まず写真を扱うエージェンシーの数が世界的に減っているということ。今年の初め、中国のビジュアル・チャイナ・グループがコービス・イメージズを買収したのは、大きなニュースでした。このように、業界が縮小傾向にあることが理由の1つと考えられます。

もう1つは、それぞれのエージェンシーが総会に派遣する人員を財政的な理由で減らしているということ。これはリーマン・ショック後の世界的景気減速からまだ抜け出ていないことなのだと認識しています。

CEPICへの、新規の参加会社は増えているのでしょうか。

これまでアジアからは、日本、韓国、インドからコンスタントに参加会社がいました。最近増えているのは、中国のエージェンシーです。

それから、マイクロストックの会社が複数参加しています。前述のシルビさんによると、クラウドソーシングを行う会社が増えているということでした。大量のビジュアルをクラウド上で管理し、その技術を使っていかに簡単に早く安く提供できるかが、デジタル時代の今、必要とされているのだと思われます。

CEPICでの会場の様子。
CEPICでの会場の様子。

2016年のCEPICでの大きなテーマは何でしたか。

CEPIC主催の大きな集まりの1つに、「IPTC (International Press Telecommunications Council/国際新聞電気通信評議会)メタデータコンファレンス」があります。2007年から毎年、開催されてきたもので、今年の議題には以下の3つが挙がりました。なお、①については、長年IPTCに関わってこられたelectric laneのサラ・ソンダース(Sarah Saunders)さんにご意見をいただきました。

①写真の価格が急落する中で、いかにライセンス収入を確保するか

ここ数年、写真業界の中でずっと問題になっているのが、写真の低価格化です。今までの売り方だと単価が下がると売り上げも下がる一方なので、コンテンツ、特にビジュアル素材を扱っている会社にとっては共通の悩みではないでしょうか。

その中で新たなビジネスモデルが生まれており、そのうちの1つが「フリーミアム」と呼ばれるもの。これは、フリー+プレミアムの造語で、最初は画像やコンテンツを無料で提供し、さらなるサービスが必要な人はお金を払うという課金スタイル。入り口は無料で途中から有料になるこのシステムは、写真業界の中では生まれたばかりで今後急成長が見込まれています。

また、従来型のライツマネージドに代わり、サブスクリプション(定額)のライセンス方式を導入している会社も増えてきており、写真の低価格化に拍車をかけています。

②著作権の保護

画像がデジタル化されるようになってから、著作権をどうやって守っていくかはもう何年も大きな課題になっています。その中でも特に、Webやソーシャルメディアに画像がアップロードされた際に、メタデータが消されてしまうという問題が話し合われました。

IPTCにおける独自の調査では、ほとんどのソーシャルメディアではメタデータが消されてしまっているか、適切に表示されていないことが判明しました。メタデータには画像の権利に関する重要な情報が含まれているので、これは問題です。とはいえ、ソーシャルメディアは自分たちの画像を宣伝してくれるツールにもなるわけで、そのメリットを最大限に活用しつつ権利を守るにはどうしたらいいかということが議題となりました。

③動画メタデータの標準規格を発表

これは「IPTCビデオメタデータハブ」というもので、2014年から議題にのぼっていて、今回ようやく最終案が出ることになりました。2016年10月末のIPTCの総会で決定する予定です。今後は動画の取り扱いも増えるであろうことを見越しての動きです。

IPTCでの会場風景。
IPTCでの会場風景。

この質問については、CEPIC執行委員会の会長であるアルフォンソ・グティエレス(Alfonso Gutierrez)さんから回答をいただきましたので、それを訳してご紹介します。

<回答>

市場の動向について、独善的に意見を述べることはできませんが、私の会社(訳注:グティエレスさんはage fotostock社の創業者)のダウンロードデータ(THP=Technological Hosting Platformの最近の画像ダウンロード状況に基づく)からは、次の傾向が見えてきます。

  • ライツマネージド(RM)→利用率の増加
  • ロイヤリティフリー(RF)→利用率の減少
  • 低価格RF→利用率の減少
  • 動画RM・RF→ごくわずかではあるが、利用は増加傾向

RMのライセンスは、出版などいくつかの使用方法・媒体で好調であり、利用が増加していると考えています。

一方、広告については、マイクロストックやRFへと移行しつつあり、そのため一部の例外を除いて、かつてのような高価格を維持することが難しくなっています。

さらに、下記のグレーで示した使用方法・媒体については、独占使用の保証を求めてRMが購入される傾向にあります。

■出版
■装飾
■広告
■パッケージ
■カレンダー
■旅行パンフ
■ゲーム、おもちゃ
■ニュース
■マルチメディア
■インターネット

青は好調グレーは低調赤は価格が変動

世界の市場は均一ではなく、どこも同じような変化が起こっているわけではないことを述べておきたいと思います。

ストックフォト市場は非常にダイナミックであり、常に新しい技術やビジネスモデルに適応してきているのです。たとえば、日本ではマイクロストックはまだ確立していないかもしれませんが、米国では既に成長の停滞期に達しており、「プレミアムRF」といったマイクロストックの欠点を補うビジネスモデルが生まれてきています。

CEPICの総会に参加されて、本山さん自身はどのような感想を持ちましたか。

時代の変化の中にあって、急に流れが変わったというよりは、ここ2、3年で感じていた流れがますます強くなったという印象を抱きました。スマホとソーシャルメディアの普及は写真の見方を大きく変えました。画像コンテンツの爆発的増加に伴う写真単価の下落は続いており、各社は新たな収入源を模索しているのではないでしょうか。ストックフォトの仕事がなくなるわけではないとCEPICでも話題にはなっていましたが、写真の価格がどこまで下がるかは心配ごとの1つです。

また写真が売れなくなってしまうとビジネスが成り立たないので、写真エージェンシーとしても報道機関としても大きな問題に直面しつつあるのだという実感を抱きました。

ヨーロッパのエージェンシーは4〜5人で経営しているなど、小規模な会社も多いのですが、それらが大手に飲み込まれないのは、医療や自然、建築など、専門性の高い分野に特化しているからです。そのような強みのあるエージェンシーとの情報交換ができたことは、非常に有意義だったと思います。


本山洋文(もとやまひろふみ)

Profile
2000年にパン・アジア・ニュースペーパー・アライアンス(現時事通信フォト)入社、旅行記事の翻訳、時事通信「デジタルフォトサービス」の開発などを手掛け、現在は海外エージェンシーとの交渉、及び英文エディターとして海外契約社向けのニュース写真配信を担当。


日本写真著作権協会常務理事・瀬尾太一さんに聞く【後編】著作権を取り巻く今後の動きと課題について

写真分野の統合組織として、写真業界における著作権活動を行ってきた日本写真著作権協会。時代の変化の波を受け、著作権に対してどのような活動を行っているのか、また今後の課題などについて、日本写真著作権協会の常務理事・瀬尾太一さんに、お話を伺いました。【前編】に続き、【後編】をご覧ください。

著作権の変化の流れは、どのような方向に向かっているのでしょうか。

著作権が、守るのではなく「使う」時代になってきたと強く感じます。「それは著作権があるから使ってはいけない」ではなく、「著作権が認められるので使用を許諾します」ということですね。「拒絶」ではなく「許諾」するための著作権であること。これは従来とは大きな違いです。

たとえば、以前に出版された写真集の中の写真を使いたいとします。写真集の版元に連絡をして著作権者の連絡先はわからないと言われると、著作権の確認ができないので写真は使えません。となったときに、その写真は使わない、あるいは許諾が取れないからパクっちゃおう、という事態が発生します。このように需要はあるのに許諾が取れず、使用できない状態を「市場の失敗」と呼びます。そしてこのような状態は、法的に使っていいという、著作権上の権利制限につながってしまいます。

また、写真は長い時間を経れば経るほど、その価値が上がります。たとえば渋谷駅の風景写真など、何十年も前の写真が貴重な歴史資料であると同時に、今撮影した写真は何十年後かに同じく貴重なものになるはずです。経年したときに、価値が劣化しないのです。その際に、著作権者が不明だと写真が利用できず、その価値は意味を失ってしまって上記のような権利制限が行われかねません。

このような権利制限を防ぐために、我々は許諾を円滑に行えるシステムを作って速やかに使えるようにしておかないといけません。そのためには、写真家だけではなく、あらゆるジャンルの著作権者が足並みをそろえ、一丸となって声をあげていかなくてはならないと考えています。

「著作権を使う」ことについて、うまくいった例はありますか?

「貸与権」がそうですね。これは本来、著作権者の許可なく著作物を貸与(貸し出し)してはならないということで、貸与許諾したものについては使用料を徴収できるという法律です。ですが、書籍や雑誌の場合は従来の貸本業者を守るために、この貸与権の行使が留保されていました。しかしレンタルショップの普及に伴い、無法地帯状態があまりにも広がりすぎたため、我々の主張で著作権者を守るために留保条項をはずし、漫画を含む書籍や雑誌に貸与権を適用。結果、著作権者に貸与料が入るようになり、コミックレンタルは今や25億円の市場となりました。

もう1つ注目したいのは「追求権」です。これはうまくいった事例ではなく、これから何とかしたいもの。たとえば自分の作品を1万円で売ったとします。その買い手が手に入れた作品を100万円で売却することができ、その次の書いては500万円で売ったとしても、最初の売り手である著作権者には何も入ってきません。転売のたびに売れた金額の一部を著作権者に支払えるようにする追求権を、日本でも根付かせたいと思っています。

そして最大の問題は、オーファン・ワークス(孤児著作物)。著作権者不明の著作物のことで、許諾が取れないため使用できないものがあまりにも多すぎます。このままですと、先ほど述べたように市場が失敗しているとみなされ、権利制限がかけられる恐れもあるため、日本写真著作権協会と他の権利者団体が連携してプランを作り、解決に向けて動いています。


前編】でもご紹介した、権利者団体とのネットワークの関係図。関係省庁はもちろん、美術や文芸、漫画といったさまざまなジャンルの権利者団体と連携しています。

著作権を取り巻く環境が変わる今、どんな対応が必要だと思いますか。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が発効されることで私が懸念しているのは、アメリカ式の懲罰的な法廷賠償制度が導入されないかということです。訴訟社会のアメリカと違って、アジア型の権利処理方式としては、白か黒かで決着をつけるのではなく段階によって許諾の仕方を分けたほうがいいと考えています。これは私が委員も兼ねている、内閣府の知的財産戦略本部が出した「知的財産推進計画2016」にも掲載しています。

●知的財産戦略本部
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201605/09chizai.html

●「知的財産推進計画2016」概要
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20160509.pdf

大切なのは、著作権の利用者と権利者の対立構造を作らないこと。そのための手段の1つとして、「ジャパコン(ジャパン・コンテンツ・ショーケース)」というサイトを、経団連がメインで作りました。これは日本のコンテンツを海外に向けて発信するための英語サイトで、Facebookのフォロワーは69万人を突破。アジアの若者たちを中心にフォロワーが広がっています。こういったサイトで写真、アニメ、映画、音楽、コミックといったジャンルの垣根を越えたつながり、さらにコンテンツの利用者と権利者のつながりを持つことで全体を把握すれば、あらゆる分野の権利を守ることに役立つのではないかと考えています。

商標権、肖像権、意匠権といったさまざまな著作権について、今後どんな動きが見込まれますか。

写真だけの著作権というカテゴリー分けは、もう古いですね。なぜなら、知財として今、最も注目すべきは、AI(人工知能)とビッグデータです。AIについては、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる新しい技術によって、それまでは人間がプログラムしたことしかできなかったことが、AI自らが学習して成長していくことが可能になりました。

著作権法の根底にあるのは、人の思想または感情を表現したものに著作権があるという考えです。でも今や、創作物は人だけが作れる時代が終わろうとしています。人ではないものが作ったものに著作権はないという定説が、今後は通用しなくなるかもしれません。これからの日本の知財は今までと違うカテゴリー分けを行う必要があり、そのうえで大量のコンテンツや著作物を守るための法律が必要になってくるでしょう。

人の手によらない創造物は、現状では著作権法の枠にはまらないし、それを認めるために法律を大きく変更することで既存の著作権者が不利益を被ってもいけない。そのバランスを取りながら、お互いの共存共益を図ることが今後の課題です。

このような状況の中、日本写真著作権協会としては単に写真の著作権問題だけを扱っていればいいとは考えていません。美術や文芸などさまざまな分野と連携して広範な著作権問題の解決に加わり、それを法律、制度として確立する役割を担っていきたいと思っています。


瀬尾太一(せおたいち)
写真家、日本写真著作権協会常務理事、日本複製権センター副理事長(専務理事代行兼務)

Profile瀬尾太一(せおたいち)
2002年より、文化庁・文化審議会著作権分科会委員(現職)、法制問題小委員会、契約流通小委員会等委員を歴任して著作権に関わる。
また、内閣府知財戦略本部・検証評価企画委員会、次世代システム検討委員会等の委員として知財政策に取り組むかたわら、写真家をはじめとする著作権者のデータベース構築にも参加し、現在、クールジャパンの情報発信を担う、経団連コンテンツポータルサイト「Japacon」統括主査。
これまでに、個展「異譚」(1992年)、「裸行」(1997年)、「幻花の舞」(2011年)などを開催。