ビジュアルマーケットの未来を担う JPAAであるために

―JPAA発足のきっかけを教えてください。

日本写真エージェンシー協会(JPAA)の原型となる会が発足したのは、今から40年以上前のことです。オリオンプレスの創始者が同業者に呼びかけ、今後のビジネスについて相談する会を設けたのがきっかけでした。

―会の目的は何でしょうか。

会員企業同士の交流と懇親。著作権の流通市場を健全な状態に作り上げるという主旨の元に集まっています。会員企業には、ストックフォトだけでなく写真流通に関わっている会社もあり、現在は29社が会員となっています。

―JPAAでは、普段どのような活動を行っていますか。

koba-sub4定期的に情報共有の場を設けています。代表的なのが、毎年2月と8月に開催するフォーラム。直近で開かれるのは2016年2月の第7回JPAAフォーラムで、テーマは2つあります。

まず1つは、トラブル事例から学ぶ著作権について。これは、アマナイメージズがボストン法律事務所の画像不正利用に対して起こした訴訟から、事件の経緯と背景、勝訴の意義、訴訟から学ぶことについて取り上げます。

2つめは、改正著作権法とTPPの影響について学ぶ、です。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定参加に伴い、著作権法がどのように変わるのか、業界にとってどのような影響が起こりうるかについて、専門の弁護士の見解を詳しく聞く予定です。

―活動についての情報は、どのような形で発信するのでしょうか。

Facebookやブログなどで積極的に情報発信を行っていく予定です。それはまず、著作権の権利者であるフォトグラファーへの最新情報の提供を目指していること。また、画像の利用者に対して、正しい使用を心がけていただくことが重要だからです。

というのも、今後のビジュアルコミュニケーションを鑑みたときに、フォトエージェンシーの立場として「ライセンスのルールを最適化」「料金体系など、画像を利用しやすいプラットフォーム作り」「時代のニーズを見極め、それに合わせた画像コンテンツの目利きである」ことは、避けては通れないと考えているからなのです。

―時代の変化は、ビジュアルの世界でも起こっていると思いますか。また、どのように対処していくお考えでしょうか。

紙媒体が幅をきかせていた時代においては通用していたことも、WEBを中心とした現代にはそぐわない部分も出始めています。時代に即したライセンスのルール、料金体系の最適化を率先して行うことで、著作権者のビジネスを守ることになり、画像利用者にはより魅力的なビジュアルを届けることにつながります。

今は、あらゆる情報が無料で手に入ります。そのせいか、インターネット上の写真も無料で使えると思っている人が多い。業界として一番警戒しているのは、画像に対する権利意識の低さと、マーケットの低価格化です。この2点は長年の課題ですが、魅力あるコンテンツを作り提供し続けていかないと、体力の弱い企業はつぶれてしまいます。そうならないためにも、エージェンシー内だけでなくフォトグラファーや利用者に対しての発信が必要なのです。

―ストックフォトにとっては難しい時代になったということでしょうか。

koba-sub2「ストックフォト」の概念についても、今は転換期にあると感じています。我々の役割はあくまでも著作物を作る人と利用者の間を取り持つことであり、「ストック」そのものが目標ではありません。写真を探し求めている人に対して充実した市場があることが重要で、それがストックなのか流動的に毎日更新されるものであるかはポイントではない。効率化を図りながら、画像を流通させるための仕組みを作る必要があります。

―そのような時代の変化を受け、これからのJPAAの活動はどのようにあるべきだと思いますか。

今後は、メインビジュアル1枚でガツンと伝える手法よりも、複数のビジュアルで奥行きのある表現、立体感のある表現をすることが求められているように感じます。としたら、1枚だけのインパクトのある写真だけでなく、関連した複数枚のビジュアルを同じテイストで見せられるようなシリーズを提供していってもいいのではないか。マーケットニーズの変化を捉えて、業界側も的確に変化していかなくてはなりません。

今の時代に合うルール、プラットフォーム、目利きのバランスを見極めつつ、業界全体で変わっていこうとしないと時代に取り残されてしまうという危機感を強く持って、今後の活動に臨んでいきたいと思っています。

 


小羽真司(こばしんじ)
日本写真エージェンシー協会(JPAA)会長

koba-profileprofile
1999年にアマナ入社。WEBプロデューサー・ディレクターとして、各種WEBサービスの開発に携わる。2009年にアマナイメージズ代表取締役社長に就任。2013年に日本写真エージェンシー協会会長(現任)、2014年アマナ取締役(現任)、同年共同通信イメージズ代表取締役社長(現任)。


 

 

著作物の無断使用はNGです

東京オリンピックのエンブレム問題の騒ぎから半年ほどが経過しました。現在、東京オリンピックの組織委員会では、候補作品を4点に絞り込み、国内外の商標調査などを経て、春頃には新エンブレムが決定する予定とのことです。桜の咲く頃には新しいエンブレムが決まるとよいですね。

さて、今回のエンブレム問題は、東京オリンピックの開催に大きなダメージを与えました。しかし、普段あまり意識されていない著作権および知的財産について考えるきっかけを与えてくれる機会にもなりました。著作権、商標、また不正使用について、これほど注目を浴びることはかつてなかったことだと感じています。

今回の件で、「ネット上にある第三者の著作物をパクる(無断で使用する)ことはNGなんだ!!!」ということが広く世間に伝わったのであれば、著作物を管理運営する我々エージェンシーやコンテンツ制作者にとっては、プラスとなる事例となりました。
この中で、私たちにとって残念だったことは、広告業界で実績のある著名なデザイナーでありながら、他人の著作物の権利を軽視して不正な使用や疑惑をもたれてしまった一連の問題です。デザイナー自身も認めていましたが、他人の著作物をネット上から許可を得ることなく無断で使用していたのです。

具体的な例として、空港の写真を合成用に使用していたことや、渋谷の街頭にエンブレムを合成した使用です。これらは、ブログや海外の旅行サイトから盗用した写真でした。

空港や渋谷の街頭の写真は、ストックフォトエージェンシーでリサーチをすれば見つけることも容易でしょう。同じような画像を使用することは難しいことではなく、通常の業務をしていれば問題はなかったように思える内容です。ストックフォトの中には、写真に加工をして合成する素材としても許諾されている写真もあります。リサーチをしてからカンプデータを入手して、制作を進め、その時点で購入することで初めて公表、公開することができます。これらの作業は別段、難しいことではありません。

おそらく、その作業をする時間、手間と費用を仕事の一部としてみなかったのでしょう。結果、この行為は、著作権法違反となりました。

「デザイン業界ではよくあります」というようなことも聞こえてきましたが、不法行為が常識というのは、未だに信じ難い事象でした。

広告や出版物、WEBの世界では、著作物、著作権とは切っても切れない密接な関係の中で制作をしなければなりません。改めて、こうした業界で働くすべての人に、著作権の大切さを考えて欲しいものだと強く希望します。ネット上に存在するコンテンツは、勝手に利用することはできないのです。

もし、写真やイラストを使用する際にわかりにくいことがあれば、各著作物を保有、管理しているエージェンシーやカメラマン、著作者に、尋ねてみるようにしましょう。難しい作業ではありませんので、あとで大変なトラブルになるよりはマシと思って、事前確認をするようオススメします。

2016/2/1
JPAA総務広報委員会