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映像素材のライブラリー企業で、今起こっていることとは?

日本映像・音楽ライブラリー協会は、業務用の映像素材と音楽素材を提供しているライブラリー企業の集合団体です。今回は、協会の会長を務める横山一隆さんにインタビュー。映像ライブラリーを扱う企業の現況や今後の課題などについて伺いました。

横山一隆

日本映像・音楽ライブラリー協会とは、どんな団体なのでしょうか?

協会の発足は1993年。写真の協会はすでにできていましたが、映像や動画を扱う企業の協会はまだありませんでした。そこで、映像という素材に価値を持たせて世の中にもっと知ってもらおうという目的で、横のつながりを作りました。

協会では、映像や音楽素材の利用方法のガイドを作ったり、著作権をクリアにして使用するにはどうしたらいいかという啓蒙活動を行っています。現在は18社プラス特別協賛企業が2社、加盟しています。映像と音楽は切っても切れない関係性がありますから、音楽素材を扱っている企業も自然に加わりました。

協会に加盟している企業にはそれぞれ個性があり、たとえば歴史素材だけを扱っているところや、ヘリやドローンによる空撮が多い企業、海外の会社のライブラリー素材を扱っていたり、劇映画などハイエンドのユーザーさんに提供する素材を扱うなど、さまざまです。

日本映像・音楽ライブラリー協会
日本映像・音楽ライブラリー協会 http://www.jvla.gr.jp/

映像素材では、どのようなトラブルが起こりがちですか。

写真でも同様のトラブルがありますが、勝手に映像をダウンロードしてしまう人が後を絶ちません。ダウンロードした映像を、誰でも簡単に見られるサイトに再アップされたりして、これは大変困りますね。

あとよくあるのが、Vコンへの無断使用です。Vコンとは、CMなどの動画撮影を行う前に作るコンテなのですが、絵ではなくサンプル動画を編集して実際のイメージに近いものを作るものです。ライブラリー素材には不正使用を防ぐためにサンプル映像であることがわかるマークが入っているのですが、そのマークが入ったままVコンを作ってクライアントの前で試写を行い、実際の制作に入るとその動画は使わない、となってしまう。サンプル使用であっても試写用Vコンに使ったわけですから、無料で使われるのはおかしいのです。明確な規定がなく、また「実制作ではないので協力してほしい」と言われることもあり、この件については各社で足並みをそろえて対処しなくてはいけないと考えています。

よくセミナーを開催されているそうですが、どのような内容なのでしょうか。

著作権に対して世間が敏感になっているのは写真も動画も同じようで、著作権に関する内容が多くなりました。人物の写り込みや特定の建物などはどこまで撮影していいのか、という質問をよく受けます。

著作権以外の問題で写真と決定的に違うのは、映像の場合は規格が大きく変わるとその影響を大きく受ける、ということです。規格というのは、撮影機材の規格のことで、ハイビジョンから4Kに、そして今や8Kの時代が来ています。高画質化がどんどん進むと、以前の規格で撮った映像は画質が荒く見え、視聴者には抵抗があります。フィルムの場合は元々が高画質のため、たとえ古いものでもデータを取り込んでしまえば修正して、今と遜色のない状態で見ることができるのですが、映像はそうはいきません。風景など汎用性のある映像をライブラリーで残したとしても、機材が進化するとその映像が意味をなさなくなってしまいます。そのような事態に、映像に携わる我々はどのように対処すべきか、以前に撮った映像の価値をどう引き出すかが大きな課題です。

またこのところ注目度が上がっているのは、ドローンによる空撮です。撮影は、どこで撮るか、どういうレンズで撮るか、どの角度で撮るか、この3つが基本的かつ大切なポイント。カメラマンによっては、「自分だけが知っている、ベストショットが撮れる場所」があって、たとえば秋に落葉すると向こうの山の峰がキレイに撮れるとか、登山道からは見えないけどここからは眼下が一望できるとか、秘蔵場所があったものです。それがドローンの登場によって、いつでもどこでもどこからでも撮れるようになってしまった。基本の3つを一気に解決する画期的なことでした。

ドローンは事故も多く、2015年から通称ドローン規制法(改正航空法)が施行され、禁止ルールが明確になりました。規制地域内であればたとえ自宅の庭であっても、200g以上のドローンを操作するのは禁止されています。当然、他の場所であっても撮影の際には国土交通省に許可を出さなくてはならないので、今後はこういった話もセミナーで共有できたらと思います。

今後の展開については、どのようにお考えですか。

日本映像・音楽ライブラリー協会ができたときは加盟会社が25社だったそうです。それからは減ってしまいましたが、まずは加盟会社を増やすよりも、協会の活動が活性化させて業務量が増やし、必然的に加盟会社が増えるようにしていきたいですね。そのために、サイトの刷新を行い、見やすく使いやすい場にしました。ヘルプデスク機能を設けたので、「こんな映像がほしい」と連絡を入れていただければ、いちいち各社に聞かなくても加盟各社に一度に確認が取れるようになっています。

昨今ではデジタルサイネージがとても増えたので、そこをターゲットにリーズナブルに映像を使ってもらえるライブラリーを考えることにもチャレンジしています。
映像とネットは親和性がいいので、デジタル化の波に乗って、うまく拡大していければいいなと思います。そのためにも、時代に合わせた展開方法を今後も考えて実行していきたいです。


横山一隆(よこやまかずたか)

profile
トーフナ映像株式会社代表取締役。1981年トーフナ映像株式会社設立。カメラマンとして業務に携わる。1985年から空撮業務を開始。昭和天皇崩御の際には、大喪の礼の空撮に参加。1998年の長野オリンピックはプレから参加し、本大会時は白馬周辺の滑降、ジャンプを空撮担当。その他、映画やCMで多くの作品に参加。2012年からドローンによる空撮を開始、カメラマンとして撮影継続中。